さよなら学校。ありがとマルヨ。

2015年2月28日


月曜日、1年2か月ちかく通っていた移民向けフィンランド語学校の修了式があった。

うちらの学校は、昔は革の加工工場があったとかいうレンガ造りの大きな建物で、その1階の奥まったところに天井がやたら高いちょっと高級風な部屋があるのだけれど、修了式はそこでとりおこなわれた。

とりおこなわれた。。と言っても、校長先生以下一同先生たちがずらっと並んでいるわけでもないし、校歌&国家斉唱があるわけでもない。

けれど、ほそながい楕円テーブルの上にはアイロンかけたて感バリバリな白いテーブルクロスがしかれ、その真ん中には大きなチョコレートケーキが鎮座していた。部屋の入り口ではいつもより気合を入れてお化粧をした担任の先生マルヨが、そわそわとあっちに行ったりこっちに行ったりしている。

それぞれクラスごとにコース開始時期がちがうので、今日修了式を迎えるのは私たちのクラス、約20人弱のみ。式の開始前10分ほど前に部屋に入ると、もうクラスメイトの半分くらいが椅子にすわって雑談していた。

クラスメイトのほか、社会の授業をおしえてくれたクロスフィットが趣味なスポーツ系人間タルヤ先生と、口ぶりがお母さん風でどことなくムーミンママを思わせるパイビッキ先生、そのほかクラスメイトの進路相談を担当していた先生も、生徒にまじって楕円テーブルをかこんでいる。

私は、テーブル真ん中あたりの空いていた席にすわった。
ウクライナ人ともだちのセルギーが隣にすわった。彼もまたマルヨみたいにおちつかなげで、ローマ彫刻顔をふがふがさせている。



1年ちょっと前この学校に通い始めたとき、私はまだ簡単な自己紹介だとか挨拶くらいしかフィンランド語ができず、赤とか青とかは言えても茶色とか灰色とかはなんて言うか知らなかった。

買い物に行ってレジでお金はらうときも、図書館で返却延滞金を払うときも、バスに乗ってプリペイドカードの使い方がわからない時も、頼んだのはモヒートじゃなくてビールですよとバーテンのお兄さんに文句を言うときも、

「あの、すみません」

の一言のあとは、全部英語ですませていた。

別にそれでも困らない。
フィンランドでは相手がよっぽどのおじいちゃんかおばあちゃんでない限りどこに行ってもたいてい英語が通じるし、テレビは英語の番組だらけだし、フィンランド語ができないイコール死活問題ということにはならないからだ。


でも、やはり置いてきぼり感はある。

周りのフィンランド人の友達たちがフィンランド語でわあーっと盛り上がっていても、何がたのしいのかわからない。

新聞や雑誌、本がよめない。

何かあっても誰かにわざわざ英語で説明してもらわないと、自分のまわりで何が起きているのか、わからない。

わかったようなわからないような、モヤモヤした憶測+アルファな状態でほったらかしにしている事だらけで、その中でふわふわと宙ぶらりん気味にすぎていく毎日。

旅行者でもないけれど、かといってちゃんと地に足つけている「生活者」という感じもしない。

私の場合はダンナとダンナの家族や、高校留学時代からの友達という、「フィンランド人のサポーター」がたくさんいるおかげで、フィンランド語ができなくても、フィンランドでは物事はどうやって流れていくのかなど知らなくても、へらへら暮らしていける。

けれど、それだからこそ、「いい年して自分ひとりでは何もできないんじゃないか」「いいのか私、こんなんで…」という気持ちが日ましにふくらんでいた。

職安主催の移民向けのフィンランド語学校に通い始めたのは、ちょうどそんなころだった。








そして、今。



スーパーではレジのお姉さんのレジ間違いをレシート振り回しつつ追及し、

ごみステーションでたむろってタバコをすっていたご近所のオジサンたちのどうしょうもない世間話にあいづちうちつつ参加し、

前を走っている車に「ウィンカーつかえ!バカー!」と悪態をつき、

テレビの前ではお天気お兄さん(というかオジサン)が今日は機嫌よくしゃべってるなと思い、

カフェの隣の席の付き合いたてカップルの会話を耳ダンボで聞いてはこそばゆく思い、

ウィンドーショッピングのつもりで入った店で美人店員さんに囲まれても、平静をよそおいつつさりげなくかわすことができるようになり、

老人ホームで暮らしているダンナ祖父アルビから電話がかかってきても、アルビじいちゃんが何言っているのかだいたいわかるようになった。



また、社会の先生パイビッキやタルヤのおかげで、

フィンランドの税金や年金、滞在許可や生活サポートの仕組みだとか法律だとか、フィンランド人に言わせると「そんなこと、考えたこともなかった」的な話についても、色々答えをみつけることができた。そういう意味では、ダンナより私のほうが色々よく知っているということもある。


1年やそこらで学べることには限りがある。


わかる事よりわからない事のほうが、まだまだ多い。


それでも、

去年の私より、今の私のほうが、地に足をつけて「フィンランドで生きている」気がする。




修了式で、私の隣に座っていたクラスメイトのウクライナ人、セルギー。
前にブログでセルギーのインターンシップ先/就職の悩みについても書いたけれど、彼は夏からしばらくインターンに行っていた会社で働けることになった。

シャレオツ系スカーフを巻いたレントゲン技師イタリア人ルチャーノは、ダメもとで履歴書を送りまくっていたら、雪のお城ルミリンナがあるケミ市の病院で働けることになり、来週オウルからケミに引っ越す。

双子ベイビーのお父さん、セネガル人のサリフも、フィンランド人の奥さんの親せきのつてで、来月からしばらくヘルシンキの電気工事会社で働けることになり、いま慌てて荷造りをしているのだそう。

ITエンジニアのお嬢様系中国人ヤッフイは今月めでたく無事に臨月で、出産のためダンナ実家のあるロバニエミ市にきのう引っ越していった。

保育士の仕事をやりたいと言っていたヒョウ柄大好きモロッコ人マダムなサミラも、来月ふたりめのベイビーを出産予定で、修了式の日から育児休暇にはいった。

最近思いついて太極拳をはじめた元船舶エンジニアのロシア人巨漢オジサンのサーシャは、50歳すぎてからフィンランド語やりはじめたわけなのだけど、「エンジニアの仕事をフィンランド語でできるようには、もう定年のおじいちゃんだよ」と言って、言葉が超堪能でなくてもできそうな介護ヘルパーの仕事をするのだと、もう今週からそっちの学校に通い始めた。





スキあらば英語でしゃべるので担任マルヨに常にマークされていたアメフト大好きメキシコ人外科医のマリオは、大学医学部に入りなおすところからやり直さなくてもいいことがこないだ判明し、大喜びしていた。
それでも医師免許試験のようなものを受け無くてはいけないらしいのだけれど、試験日をまつ間ヒマだからとインターンをさせてくれるとこを探していて、その受け入れ先もこないだきまった。今週からすぐにそこに行けるわけではないのだけれど、もうすこししたら医者の仕事ができると喜んでいた。

闘鶏とカラオケとバスケが趣味なフィリピン人イクメンパパなマイケルはコックなのだけれど、学校の期間中に行ったインターン先のレストランのボスに気にいられ、ボスが来月新しくオープンするインド料理レストランで働けることになった。
就職がきまったというのに、肝心のフギエニパッシ(私もこないだ受験した食品衛生管理者資格)の試験になかなか合格できずみんなヒヤヒヤしていたのだけれど、先週チャレンジ7回目にしてようやく合格。晴れてコックとして働けることになった。

写真が趣味で家電マニアのイラク人エサムと、超絶美人のフィンランド人彼女がいるこれまたイラク人のレビン、元政治家コートジボアール人イサクはもうちょっと同じ学校内でフィンランド語を勉強したいと、他のクラスに移動して勉強を続けることになった。



こんなふうに修了式前に次の進路がきまっている人も半分ほどいたけれど、のこりのクラスメイトは次にどうするか決まらないまま学校を去ることになった。

私はしばらくは本腰をすえて就職活動をすることにしているのだけれど、どこかに所属することが決まっていないという意味では、宙ぶらりんなことにかわりはない。




修了式は、1年以上にわたって私たちの担当の先生を務めてくれたマルヨのスピーチで終わった。
スピーチといっても、マイクがあるわけでも、格式ばって紙に書かれた文書を読み上げるとかいうのでもない。いつもの教室で話しているのと、何ら変わらない。


「次が決まっているヒトも、そうじゃないヒトもいるけれど、みんな、自信もって、自分を信じてやればだいじょうぶだから!」


最後にみんなで記念撮影をしようと、裏口から太陽が少し出てきた外にみんなで出た。
レンガ造りの校舎の赤茶色い壁には暖気でとけた雪のしみのようなものがつき、学校のカフェの換気扇が近くにあるのか、ジャガイモをゆでるにおいがした。



サアサアみんな、笑って笑って!

泣いても笑っても、今日で学校は最後なんだから!


「うー、かー、こー、ムイックー!」
(↑「いち、にー、さん、チーズ!」という意味)




ありがと マルヨ!

ありがと みんな!







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これまでしつこい学校ネタに愛想をつかすことなく読んでくださった皆様、
ありがとうございました。これからも時々学校話思い出してなんか
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