イケメン・オッリのはげまし(お別れ編)

2014年9月15日



ひさしぶりに、リミンカ湾自然センターのイケメン・オッリの話。

(「え?誰それオッリって?なにそれリミンカ湾自然センターって?」という方は、
過去記事
・『このドキドキかげんはもはや恋?インターンシップに行って来いと言い渡された話
・『フィンランドの自然センターの裏事情を垣間見つつ、オッリの靴下を見つめる
・『リミンカ湾自然センター そもそもの話
・『イケメンは天然アイスブレーカー(国立公園セミナー編)
・『ロクア国立公園が予想以上にステキでイケメンもかすんだ話
などなどをご参照ください。)


私のインターンシップ期間も終了まぎわになったある日の午後、私はカフェでオッリと向かい合ってすわっていた。

自然センターの中にある吹き抜けに光さんさんとふりそそぐカフェには、私ら2人のほかにはお客さんは誰もいない。ホールにはBGMなどもかかっていないので、コックのヴェイノ(サッカー大好き中年フィン男)が、鍋だかなにかをガシャガシャやりながら、ふんふん鼻歌をうたっていいるのがキッチンのほうからときどき聞こえてくる。ちなみに、ヴェイノはすんごいおんちだ。


テーブルの上には紙が2枚。

インターンシップの成果について私の学校に提出する紙だ。1枚は私が書く自己評価。もう1枚は、インターン先の受け入れ担当者が記入する評価書。どっちもまだ白紙だ。



ペンギンの絵のついたブルーベリー味のアイスクリームをむしゃむしゃしながら、オッリと私はこの紙について、つまり、オッリ担当分の紙にどう書くかについて相談していた。本当ならオッリが1人で書いてそのまま学校に送ってもらってもいい書類で、私に事前に書く内容について相談してくれなくても、書いた内容を見せてくれなくたってぜんぜんいいものだ。けれど、オッリは一緒にインターンシップの成果についてふりかえりをするいい機会だからといって、私としゃべりながら書くことにしたらしいのだ。

紙はA4一枚で、表面はフィンランド語のでき具合について、裏面は仕事内容について。

キッチンからただようヴェイノのおんち鼻歌をBGMに、オッリが質問をよみあげ、回答&コメント。
私は怒涛の勢いで溶けていくアイスと格闘しながらオッリに適宜レスポンス。

質問の内容はごくシンプルで、どの程度までフィンランド語が仕事をこなしたか、口語・スラングの理解度、業務上必要なボキャブラリーの有無、インターン中の主なタスクや今後の課題などなどで、さらさら茶色ヘアーをかきあげながら、オッリ、順調に書き進めていく。




それにしても、よーく見てみたら、オッリの手書きの字がすごいことになっている。

どうすごいって、もう、読める読めないのレベル超えてる。

筆記体化が進みすぎてくずれて潰れて解読不能とかいうレベルじゃなく、
たとえて言うなら、古代帝国のくさび文字。。。

あんた、これボールペンじゃなく、ヘラで書いたでしょ!ってくらいの勢いだ。

点と線で構成されてるとしか言いようがなく、もう、これがどうアルファベットなのか、意味が分からない。

くさび文字をあやつるイケメン青年、オッリ。。
しかし、彼の活躍の場はインディージョーンズの世界ではなく、リミンカ湾自然センターだ。。

そう、リミンカ湾自然センターでは、たまにくさび文字事件が発生していた。
事務所の共同テーブルにおいてあった、いつ誰が何をしているかを書き込む共同スケジュール帖にはじまり、給湯室のメモ、電話の伝言メモ、などなど。。

なんて書いてあるのかわかんなくて、いつも同僚のミラに解読してもらっていたのだけれど、ずっと不思議青年ペトリの字だと思っていた。しゃべるときも何言ってるかわかんなければ、書いたものもよくわかんないという、ほんと、ペトリは謎のヒトだな、と勝手に思っていたのだ。(ペトリのフィンランド語のわかりにくさについては過去記事『ナチュラリスト男子ペトリのフィンランド語がわからない』をご参照ください。)

ぬれぎぬ着せて、悪かったわね、、ペトリ。。


それにしても、この評価書、オシャベリしながら目の前で書いてくれてよかった。書き終わった紙だけペロッともらってたら、絶対理解不能だったわ。。




オッリ、くさび文字を評価書にしたためながら、おもむろに顔を上げた。
ふわっと広がるサラサラ茶色ヘアー。
黒ぶちメガネをさっとはずしてテーブルに置いたかとおもうと、ひとこと、

「このあとはまた学校に戻るとおもうんだけど、学校おわったあと、どうするつもりなの?」


え?いまの移民向け学校修了後ってことですか?


「そう。就職するとか、進学するとか。」


イケメンは、私の進路まで心配してくれるのか!
無敵のイケメンもここまでくるとカリスマレベルだな!
とりあえず、くさび文字の罪は帳消しにした。


「希望はもう決まってるの?」

と、カリスマイケメン・オッリ。
押すな、イケメン!

自分自身には毎日問いかけつつも、他人にここまで直球で聞かれることはそんなにないので、私はちょっとたじたじしてしまった。なのだけど、イケメンが超至近距離でせまってきてるので、答えないわけにはいかない。


希望は。。。
前職とおなじような職場で、同じような仕事をしたいってことでございます。。つまり自然保全系の非営利団体か自然センターのようなところの広報の職が第一希望。。

でも、そういう求人ってそこらにそんなにころがっているもんではないので、どうしようかなと思っているところでございます。。


と、私は素直に答えた。


「そうだよね、なかなかないんだよね。。」


といいつつ、オッリは自分がリミンカ湾自然センターの職にたどり着くまでの話をしてくれた。




オッリはオウルから200キロほど南東に離れたところにあるカヤーニという町でそだった。
小さいころから野生児で自然の中でばかり遊んでいた…というタイプでは全然なかったのだけれど、オウル大学に在学中から自然に直接かかわる仕事に就きたいと希望するようになった。

自然に直接かかわる仕事といっても、色々ある。

研究者、国立公園管理・森林資源管理系の公務員、地方自治体や博物館の職員、自然ガイドなどなど。公務員や研究者系は空きポストがめったになく、オッリの就職活動中にそういう募集はほとんど見つけられなかった。

かわりに、オッリは自然ガイドの仕事を見つけた。

オウルから北に200キロほど離れたところにあるクーサモ(Kuusamo)という国立公園を拠点にする、ラフティングツアーを売りにしたガイド会社だ。クーサモにはフィンランドでもけっこう有名なラフティングスポットがある。そこで、オッリはラフティングのガイドになった。

ラフティングっていうのは、けっこうな水量のある急流をゴムボートで水しぶきをざんざん浴びながら下るスポーツだ。ジェットコースターのスリルを、自然の川の中で楽しめるので、観光客に人気がある。
もともと体力がありアウトドアスポーツが好きで、声もよくとおって、かつ、人見知りしない性格、その上自然についての知識も豊富だったオッリにとって、ほとんどこれは天職だったんじゃないかなと私なんかは思うんだけれど、本人もこの仕事はけっこう気に言っていたらしい。

水を得た魚、もとい、水を得たオッリ、もとい、水もしたたるイケメンガイド・オッリは、ここで5年ほど働いた。

「でもさ、そういう働き方、いつまでも続けられないと思ったんだよね」

と、オッリ。

夏の間はラフティングの仕事で稼げるだけ稼ぎ、冬の間はほとんど失業状態、もしくはラップランドなど別の町のガイドの仕事をして生活するという生活サイクルがつらくなったのだという。
家族がいても(ちなみにオッリは既婚者です)、一緒に夏休みをのんびりすごすというのもなかなかできないし、冬は冬でいつも不安定な暮らしなんだから、これがベスト、一生これでいいとは思わなかっただろう。ハイシーズンは毎日朝から晩まで(というか白夜だからけっこう夜おそい時間まで)川をくだるので、体力的にもけっこうきつかったそうだ。

だから、リミンカ湾自然センターが改築され新しく職員を募集することになったことを知ったときは、すぐ応募した。ラフティングガイドの仕事に未練はなかったそうだ。
それが、2年半ほど前の話。

今はこのリミンカ湾自然センターの仕事、つまり、仕事のなかみと、働き方の両方に満足してるそうだ。



「日本だったとはいえ8年も経験あるんだから、フィンランド語さえなんとかして、求人でたらすかさずガツガツいけば、きっと仕事みつかるよ。」

と、オッリは励ましてくれ、その手の仕事の求人がよくでる求人サイトを教えてくれたんだけれど、その、肝心のフィンランド語がね。。。

前途多難。。。
異国で就職するってのは、たいへんなことだわ。。
わかってはいたけれど。。。

私の脳裏にくらーい影やら不安の雲がうずまいてるのに気が付いたのか、イケメンおもむろに立ち上がり、私の隣にすわった。

ええええ、なに、どうしたイケメン!近いんですけど!
あまりの至近距離で鼻血でそう。ていうか、たぶんちょっと出てた。

「なんとかなるっ!」

といって、ふがふが過呼吸寸前の私を、カリスマ・イケメン、なんと公共の面前、というか職場内でぎゅうぎゅうと余すところなく、ハグ。。

水しぶきかぶりながらラフティングボートの上でたくましく采配をふるガイド中のオッリの姿がはたと脳裏にうかび、あやうく鼻血どころか出血過多で病院行きになるところだった。

それにしても、すごいなこのヒト、励ましとはいえ同僚を職場でぎゅうぎゅうハグなんて、
絶対フィンランド育ちじゃないわ。。




インターンの話をすると、いろんなヒトに、

『オッリがイケメンだった件について、ダンナにはちゃんと報告しましたか』と、聞かれるので、ここでお答えしたいのだけれど、

もちろんダンナにはちゃんと報告しました。

イケメンだった件だけでなく、アイスを買ってくれた件も、コーヒーいれてくれる件も、ドアを開けてくれる件も、荷物持ってくれる件も、めちゃめちゃほめまくってくれる件も、ハグ付きの励ましまでしていただいた件も、逐一報告しました。

その結果、ダンナはものすごいライバル意識を掻きたてられたわけで、インターン中、ほぼ毎日弁当をつくってくれるという快挙(サンドイッチか残りモノ詰め合わせですが)をなしとげたのだった。

今ですか?

週に何度かはいまでも作ってくれる。

これもすべて、イケメンのおかげ(間接的だけど)。。。


ありがとう、イケメン・オッリ!!





…というわけで、インターン先、リミンカ湾自然センターの話はこれでおしまいです。

それでは、また!


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