アルビじいちゃんの夏の家とそのサウナ

2014年8月23日



アルビはダンナの母方のおじいちゃんだ。

今年で93歳。

オウルから車で南に2時間くらい走ったところにある町に住んでいる。
おばあちゃんが10年くらい前に死んでしまったので、今は一人暮らしだ。

アルビじいちゃんは夏の間は普段の生活から離れてのんびり過ごせるようにと、夏の家、フィンランド語で言うモッキ(Mökki)いわゆるサマーコテッジを30年くらい前に自分で建てた。

アルビじいちゃんは別に大工だったわけではない(水道会社のサラリーマンだった)けれど、フィンランドでは組み立てれば自分で作れるようなモッキのキットが売られていて、アルビはそれを買って作ったのだ。





30年くらい前って言ったってアルビは当時60歳目前だったはずで、それなりに年だったと思うのだけど、肉体労働もものともせず、じいちゃんは嬉々としてモッキを作ったそうだ。





私が18年前にはじめてアルビじいちゃんに会ったのも、このモッキでだった。

ホストファミリーだったダンナ一家に連れられて遊びに来た時のことだった。


(注:「え?なに?高校留学?18年前?話とびすぎなんだけど?!」という皆さんへ。。。。ダンナの家族と私は1996年の高校留学時代ホームステイからの付き合いなのですが、そこらへんの話はプロフィールと過去記事にちょっと書きましたのでそちらをご覧ください→ 過去記事『クリスマスはお墓参りとミッコ伝説で』




その頃のアルビじいちゃんは、夏の間ほとんどずっとこのモッキで暮らしていた。
たまに行くのじゃなく、ほんと、ここに住んでいた。

だから私にとってこのモッキは、「サマーコテッジ」と英語訳風に呼ぶより「夏の家」と呼んだほうがしっくりくる。




アジアのどこかからやってきた(当時のじいちゃんは日本がどこにあるか知らなった)黒髪の高校女子をアルビじいちゃんはたいそうかわいがってくれた。

フィンランド語もたいしてわからない私に、みぶりてぶりで一生懸命自慢のモッキを案内してくれ、たき火をたけば私をまず隣にすわらせ、朝は寝起きの私にたくさんバターをのっけたおかゆをすすめてくれた。

フィンランド人のソウルフード的な、けれど見た目と味が素朴すぎて外国人には大変不評な豆のスープ・ヘルネケイットが私は好きだというと、すごい喜んで何回も作ってくれた。




アルビじいちゃんは最近自分でもものすごく年を取ったと思うようになったらしく、突然死んで相続で面倒なことになったらイヤだからと、5年くらい前にこの夏の家を自分の子供たちに相続させることにした。

そんなわけで、今は、この夏の家はアルビの娘3人と息子1人、合計4人が共同で所有している。

この4人が維持費を割り勘し、一週間づつ交代で使う。
草刈やら各種修理などは分担したり、日付をきめてみんなで集まって一緒にやったりする。




4人だと、ちょうど1か月に1週間づつ自分たちが使える順番が回ってくる。
けどたまには「自分の使える週じゃないんだけど、どうしてもこの日、この週に使いたい!」というときがある。

そういうときは、その使いたい週に当たっている人に直接交渉して自分のもちぶんの日と交換してもらうシステムになっている。





で、この交換交渉がけっこうしょっちゅうあるのだけど、その交渉のついでに各家族の近況報告がなされる。

そんなわけでワタシらは、ヘルシンキに住んでいるダンナのいとこが先週車をぶつけただとか、ベルリンに住んでるダンナのいとこのベイビーがさいきん寝返りを打てるようになっただとか、ダンナのオバサンの家の水道管が破裂しただとか、ダンナのオジサンがこないだ飲み会ですごいくだらないオヤジギャグを口走っちゃったんだけど今ものすごく反省しているだとか、そういう家庭内ホット情報に乗り遅れることもない。




この夏の家がなかったら、いくら仲良くたって毎週のように電話することはなかっただろう。

アルビじいちゃんがみんなに残してくれたのは、「家そのもの」だけじゃなかった。





アルビじいちゃんの自慢はサウナだ。

サウナ小屋は母屋から20mくらい離れた湖のほとりにある。

サウナまでは、細い小道がつづいている。




サウナは湖のすぐそばに建っている。

去年までこのサウナの裏にみんなお気に入りのけっこう大きい木があったんだけれど、ダンナのオバサンのダンナ(…くどいわ)が今年切り倒しちゃったのだ。
周辺整備のためチェーンソーで周りのヤブをバリバリやってたら楽しくなっちゃって、やめられないとまらないの勢いでこっちの木も切っちゃったらしい。

そしたら、
「みんなの木なのに、勝手に切っちゃって、ヒドイ!!!」
とみなさんから大ブーイング。。。(ブーイングの電話は数時間に及んだらしい。。。)

共同のものって、どこまで自分の判断でやっていいのかとか、むずかしいのよね。。




サウナ小屋のあがりまちには、水を張ったたらいが置いてある。
ここで砂だらけの足をすすいでから、サウナに入る。

サウナからすっぽんぽんで湖まで走っていってジャブンとやって戻ってきたヒトの足は、砂だらけだから。




その、あがりまちのコンクリートには、アルビじいちゃんの手形がついている。

コンクリートをべたべた手につけながら嬉しそうな顔しているアルビじいちゃんの顔が目に浮かぶよう。。




サウナが完成した年もきざんである。

1984年。

ひっそりと今年30周年じゃないですか。。 

だから今年は屋根とか壁の修理したのかもね。。
築30年ったら、それなりに傷むところもあるものね。。



薪を運ぶ入れ物↓もアルビじいちゃんがつくったらしい。



脱衣所は4畳ほど。
ここの天井とベンチや棚は今年新しくなった。




脱衣所の壁には、ザ・サウナ三種の神器。

マッチ(薪に火をつける)
フック(タオルをひっかける)
栓抜き(ビールをふたを開ける)



サウナにはたいてい多くても4人くらいで入るのだけれど、つめれば6人くらいイケそう。

右下にあるのが、サウナの石をあっためるストーブ。
薪であっためる。



湖に面して、ちいさい窓がついている。
でも開けられない構造の窓なので、換気をしたいときは換気用の小窓(5センチ×20センチくらいの穴)を開けてする。




サウナをあっためるストーブには、石のすぐとなりに水を入れるタンクがついている。
火と焼けた石の熱で、この水があっためられてお湯になるので、これで体や髪の毛を洗ったりする。



ちなみにこのストーブ、今年の春に新しくやってきた。
古いストーブはお湯を使いたいときは毎回タンクのふたをもちあげてお湯をくまなくてはならなかったのだけれど、新しいストーブは側面に蛇口がついていて、蛇口をひねるだけでお湯がでるようになった。

ハイテク。。。



サウナもだし、この夏の家全体もそうなんだけれど、ここには水道はない。
飲み水以外はぜんぶ湖の水をバケツでくんできて使っている。
お皿を洗うのも、サウナで使う水も、ぜんぶ。

サウナで使う水は、湖からくんできて、サウナの中にある桶などにためておく。




で、この冷たい湖の水と、ストーブであったまった熱湯を四角い巨大な洗面器のようなものの中でまぜて適温にして、それで体をあらう。

湖の水100%なので、藻とかがたまに入っているんだけど、サウナの中が暗いし熱いしでけっこう必死なので、そんなことはけっこうどうでもよくなる。




サウナの壁からは、あちこちから松やにがにじみだしている。




この松やにのつららをボキっと折ってアツアツの石の上に乗せると、解けて(焼けて)すごくいい木のにおいがする。

蒸気にまざってただよう、木の香り。。
たとえていうなら。。。フィンランド版ヒノキ風呂のようなかんじ?

ただし、すんごい煙がでることもあるので、よいこは面白がってぼんぼんほおり込んだりせず、ほどほどにするのがいいと思う。



ちなみに、同じ要領でサウナの焼け石にビールをかけると、蒸気といっしょに香ばしい焼きたてパンのにおいがばああーーっとサウナ中に広がる。

ビールも麦からできているのだと実感できる瞬間だ。


サウナじゅうに広がる、焼きたてのパンの香り。。。
たとえて言うなら、パン焼き窯に閉じ込められたような感じ。。。?

アンパンマンの気持ちが味わえるわけね。。
楽しいけれど、ビールももったいないので、よいこは年に1度やるくらいにしておいたほうがいいと思う。




この夏の家には、来た人が書いていく日記のようなノートがおいてある。

いつ、だれがだれと来て、何をしたか。
どんなことがあったかだけでなく、次に来る人やみんなへの事務連絡が書いてあることもあるし、即興の詩みたいなのが書いてあることもある。

この夏の家ができたときからずっと何冊にもわたって続いている習慣で、今のは3冊目だか4冊目だかだと聞いたような気がする。

この夏の家ができた当初のころから現在のまでを全部読んでみたらすごい面白いだろうなとだいぶ長いこと思っているのだけれど、そのためにはまずフィンランド語の勉強だわね。。。




アルビじいちゃんは、この夏の家を譲り渡した後もずっと元気だった。
さすがに一人で来ることはなくなったけれど、子供たちの家族にエスコートされてやってきては、ここで夏を楽しんでいた。

そんなアルビじいちゃん、先週家で倒れているところをやってきた介護ヘルパーさんに発見され、病院に運ばれてしまった。

そして、そのまま入院。
93歳にもなれば、いろいろ悪いところもあるだろう。



早く元気になってくれるといいなと願いつつ、じいちゃんの夏の家に思いをはせた今晩だった。


それでは、また!



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