ムーミン谷のゴルゴ13

2014年4月22日

たまに日本に里帰りして、ダンナがフィンランド人で自分もふだんフィンランドに住んでいるんですヨと言うと、
「フィンランド行ったことあります/いつか行ってみたいんですよねー」とか
「フィンランドってムーミンとかサンタの国ですよね」とか
「うちでイイッタラとかアラビアの食器、使ってますよー」
とかそういう話になることが多い。

けどまあ、もちろん例外もある。こないだ元同僚で友達のユキさんちに泊りがけで飲みに行ったときは斬新なフィンランドネタでもりあがった。




ユキさんは知床半島の羅臼町に住んでいる。

羅臼町は、映画「地の果てに生きるもの」とか、ドラマ「北の国から」のシリーズ最終作になった「2002遺言」のロケ地にもなったところだ。
どーしょーもなくたよりなげな純がぼろんぼろんの番屋で暮らしながら、水産加工場で働く内田ゆきのことを好きになっちゃったり、おかげで内田ゆきのダンナである羅臼漁師の岸谷五朗にぼっこぼこにされちゃったりした、あの羅臼町だ。

最近は羅臼でシャチやらマッコウクジラなどが見れることが知られてきて、ホエールウォッチングの町としても有名になってきているようだ。

ユキさんち家は、そんな一見キレイだけどスリルいっぱいの羅臼の海が窓のすぐ外にひろがっているアパート。その日も窓からみた海には流氷がぼこぼこうかんでいて、その流氷の上にはオオワシがすわってぼーっと遠くを見ていた。


泊まりに行った晩は、ユキさんに加え元同僚のシラヤナギさんとママベさん、そのときたまたまインターンにきていた学生さんも来てくれて、一緒に楽しく飲んだ。

だいぶおなかがいっぱいになったころ、賢くなったのび太くんみたいで可笑しい人ママベさんがおもむろにメガネをぐいっと押し上げながら、

「シモ・ヘイへってしってますか?」

と言い出した。



「んん??シモ・ハユハ…??」

と、ダンナ。


「そうそう、そう!! 『フィンランドではシモ・ヘイへではなく、シモ・ハユハと呼ぶ』ってウィキペディアにも書いてありましたよー。ほんとにシモ・ハユハって言うんッスねー!」

賢いのび太、もといママベ氏もダンナもコーフン気味だ。長年の文通相手に道端でばったりであったような意気投合かげんである。
そんでもって、ハユハ!ハユハ!! とふたりで、激しく復唱。。 めんどくさいわ。。こういう人たち。。

そこに、すっかり話題にのりおくれた人、ユキ氏が素朴な質問をなげてきた。
「ええ?何それ??シモハウなに?」

あああ、聞いちゃったよ、禁断の質問を。。。

答えたくってふがふがしてるダンナとママベ氏をさしおいて答えを言っちゃったのは、24時間彼女募集中な不器用男子シラヤナギさんだ。

「それって、フィンランドの伝説のスナイパーのことっすよね」




そう、シモ・ハユハ(Simo Häyhä)とは、第二次大戦中にロシア(当時はソ連)がフィンランドを占領しようと侵入してきたために発生した戦争、いわゆる「冬戦争」のときに、フィンランドの独立を守るためにものすごい貢献をしたとされる軍人で、伝説のスナイパーとしてフィンランドでは今でも語り草になっている。(下のプロフ写真はWikipediaからお借りしました。)





シモ・ハユハは今でもスナイパー史上最多の確認戦果(ようするに生涯に何人射殺したか)を保持していて、それは505名にも上るそうだ。ソ連軍側には「白い死神」といって恐れられたらしい。ちなみに上のプロフ写真で顔が半分くずれちゃってるのは、シモをおそれた敵軍がよこしたカウンタースナイパーに撃たれちゃったためだ。

毎年12月のフィンランド独立記念日あたりになるとフィンランド人のFacebookあたりには、「強大な軍事力をふりかざしたソ連軍に対し、勇敢に戦って独立を守ったフィンランド軍」とかいう投稿が氾濫する。たとえば、こんなかんじ↓

ほう。。たしかに戦車30台でソ連の6500台に立ち向かったのはすごいわね。。



ともかく、この話題について私がちょっとでも質問しようもんなら、フィンランド人みんなで寄ってたかって詳しく講釈してくださる。
そんなときにその冬戦争の英雄として必ずといっていいほど話に出てくるのが、この、レジェンド・シモ氏だ。

個人的には、いくらフィンランドの独立を守るためにやったためのことだったとしても、何人殺したかを誇らしげに吹聴するのは人道的にどうなんだ、殺されたロシア人にも家族はあっただろうなどと思わないこともない。それに、国をまもるためだったとしても、むやみに戦争を美化して語るのもかなりどうかと思う。

なのでレジェンド・シモねたは、私個人的には普段はけっこう聞き流しているんだけれど、今回は私以外の面々からの質問ということで、ダンナがいっしょうけんめいしゃべりだしたので、お付き合いしておとなしく聞いた。




シモ氏のレジェンダリーなエピソードには、「マジでそこまでやるのですか??」というたぐいのネタが多い。

【シモ・レジェンド その1】
ライフルのスコープ(銃の上につける双眼鏡のようなもの)を使わなかった。

使わないとどうなるか。早い話、よく見えないので当たる確率が減る。
それでも使わなかった理由は、2つ。

①スコープを使うと銃を構えるときに体を高く起こさなくてはならず敵に見つかりやすい。
②スコープを使うとスコープのレンズに日光などが反射してピカッとひかってしまい、敵に見つかりやすい。

全然シモ氏とは関係ないけれど、②を聞くたびに戦場カメラマンの渡部陽一さんを思い出す。
いつだかテレビで、渡部さんがカメラに日光が反射してピカッと光るのが銃を持っているのだと勘違いされ、カメラマンが撃たれてしまう話をしていて、
「わたしは カメラが… 光を 反射しないように… カメラ ぜんたいに テープを… 貼って… いるんです。。」
と言っていた。私は渡部さんがたいそうお気に入りなので、ぜひテープたくさん貼って長生きしてほしいと思う。



【シモ・レジェンド その2】
とにかく人間離れした射撃のうでまえ。

狙撃訓練では150mの距離から1分間に16発も的(まと)に当てたらしい。
実戦でも300m以内ならほぼ確実にターゲットの頭に当てたらしい。
300mってどのくらいかというと、歩いたら5分以上かかる距離、もしくはグリコ1粒で走れる距離だ。それが近いか遠いかは読んでくださっている方の判断におまかせする。



【シモ・レジェンド その3】
自分の吐くしろい息で敵に自分の居場所をさとられないために、雪を口にいれて息を冷やし、口から出る息が白くならないようにした。

寒いとこでの戦争ならではの工夫ですなあ。。。
銃の腕前だけじゃなく、ほんと細かいとこまで気が付く慎重な人だったもよう。



【シモ・レジェンド その3】
トイレは、びん。

狙った敵が隙を見せるまでじっと待ち伏せすること数日、敵が隙を見せる瞬間をぜったい逃すまいと、トイレのためにその場をはなれることもなく、ビンで用を足した。
銃の腕前がすばらしくそのうえ細かいとこまで気が付く慎重な人だっただけでなく、そのうえ果てしなくがまんづよい人だったもよう。



と、ダンナによるこんなかんじの「レジェンド・シモ 絶大リスペクト!!」なエピソードは延々とつづく。。




いつだったか、「なんでそんなにシモのことよく知ってるの?もしかしてアナタ、軍事オタク?」とダンナに聞いたことがある。そしたら「学校でならった」と言っていた。ダンナの友達や自分の周りのフィン人に聞いてもおんなじこと言っていたので、たぶん中学校くらいの歴史の授業かなんかで「こんな戦争があって、こんな人が活躍しました」とかなんとか習うのかもしれない。

日本で例えるなら、社会の授業で教科書の隅っこのコラムとか資料集にでてくる戦国武将の武勇伝みたいなノリだろうか。そういえば私の中学生のころも、クラスにやたら織田信長とか、武田信玄とか詳しい男子、いたなあ。。

あと、フィンランドでは男子は兵役があるので(ちなみに女子も行きたければ行ける)、特に教官に教えられずとも訓練中に同期どうしでシモレジェンドの話題になることもあるかもしれない。

(もっとシモ・レジェンドについて知りたい方は、シモ氏についてのウィキペディア記事もあります →こちら。)




と、ここまでシモ・レジェンドそのものについて書いたけれど、今回私が驚いたのはシモレジェンドそのものじゃない。

日本でも、シモがけっこうな有名人だってことについてだ。
いや、正確にいうと、日本の一部の人たちには絶大に有名だったことについてだ。
これはホント、初耳だった。 

知床のび太ママベさんと、知床の24時間彼女募集中ボーイ・シラヤナギさんが教えてくれた。 

「にちゃんねるとか、ネットで超有名人っすよ!」とママベさん。

見せてもらったら、ホント出てくるわ出てくるわ、シモについて語りまくる人々よ。。。。
もしシモが敵側にいたらどうやって対処するかという議論がものすごく白熱していて、訳してあげたらダンナは相当ツボだったらしく、悶絶していた。


私のお気に入りはアンサイクロペディアのシモについての記事
アンサイクロペディアはウィキペディアのパロディサイトで、基本的に書いてあることすべてがパロディ。だので、みなさん読んでも本気にしないでほしいし、「何これ悪ふざけがひどすぎるワ」とか言わないでおおめに見てほしいのだけど、

・ムーミン谷のゴルゴ13
・デスノートにハユハの名前かいたけどだめだった だってハユハが人間じゃなく妖精だったから

とか、超ツボだわ。。。
「ムーミン谷のゴルゴ13」とか、そのネーミングセンスを分けてもらえたらいつか私もどこぞの広告代理店の人気コピーライターになっているかもしれない。

ちなみにこのサイト、もともとは外国発祥のものだからか記事によっては日本語だけでなく各国語がある。シモについての記事はフィンランド語版と、ポーランド語版があった。内容は元ネタの各国語訳というのでは全くなく、それぞれの国の人の書きたい人が書きたいことを好きに書いているので、日本語版、フィン語版、ポーランド語版、それぞれ全然違う。

ダンナによると、フィン語版より日本語版のほうがディテールが凝っていて、おもしろいらしい。

これもひとえに、日本の熱心なファンの皆さんのおかげかもね。。。

シラヤナギさんによると、シモがメインキャラとして登場する日本の漫画とかもあるらしい。
ほんと、私が知らなかっただけで、世の中にはいろんな形のフィンランドねたファンのみなさんがいらっしゃるのね。。ちょっとフィンランドに住んでるからってフィンランド知ってますみたいな顔絶対できんわ、穴があったら入りたいわ、と思った次第であった。




先日の日本滞在中はこんなかんじで、「実はフィンランドネタって、こんなにメジャーだったのね」「フィンランドに興味のある人ってこんなにいるのね」と思う機会が多く、びっくりしたのでした。

それでは、また!






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