世界で一番正直な町かもよ、オウル

2014年3月13日


いきなりだけど、私は想定外な展開が好き。

もちろん、水戸黄門の決め台詞がいつも一緒であっても、暴れん坊将軍の登場タイミングが毎回おんなじであっても、ゾンビにかじられたら必ずゾンビになっちゃうとしても、別にそれがダメだとか思っているわけではない。

ただ私が、聞いてた通り、想像してた通り、ウスウス感じてた通りとかいうのを、たまにはヒョイっと超えてみたいと妄想するタイプの人間だ、というだけだ。

たまには水戸黄門様には別の決め台詞を使っていただき、暴れん坊将軍様には番組終了10分前のかわりに開始5分後とかに正体をあかしていただき、ゾンビにかじられたらエイリアンになっちゃた、とかいう展開になってほしいと思っているだけだ。

そんな私なので、ブログも「こんな風に聞いてたけど実際はぜんぜん違いましたぜ」だとかなるべくサプライズのあるネタを書きたいと思っている。

しかし、今日はあえて、「聞いてた通りの展開でした」な話だ。


いや、正確には「聞いてはいたけど、まさかホントだとは思ってなかった」という話だ。




去年の秋(2013年9月)、こんなニュース記事を見た。

「世界一正直な街」はヘルシンキ? 米誌が財布を落とし実験
世界各地の都市でわざと財布を落とし、拾い主が届けてくれるかどうかを試してみたら――。米誌リーダーズダイジェストがこんな実験で市民の「正直さ」を比較しランキングを発表した。
 同誌のチームは米ニューヨークからインドのムンバイまで世界16都市でそれぞれ12個ずつ、公園や歩道、ショッピングセンターの近くなどに財布を落としておき、拾った人がどうするかを見届けた。財布には50ドル分の現金と携帯電話の番号、名刺、クーポンと家族写真を入れた。計192個の財布のうち、返却されたのは90個。都市別ではフィンランドのヘルシンキがトップで、12個中11個が返ってきた。2位はムンバイの9個、3位にはハンガリー・ブダペストとニューヨークが8個で並んだ。

(引用:CNN.JPより→ 元記事はこちら CNN.JPサイト)



SNSなどでもリンクがけっこう出回っていたので、すでにご存じの方もたくさんいらっしゃるだろうと思うが、なんと、世界16都市中、フィンランドのヘルシンキが堂々の1位であった。

これを読んだとき私がまず思ったのは、サンプル数たったの12個で世界各都市の「正直さ」なんていう人間的な価値を比較しちゃっていいのか?ということだったんだけれど、ともかくフィンランドが1位であったので、だまっていた(最下位だったら、「これはサンプル数少なすぎて信憑性ない」とか口走りつつ、フィンランドを擁護いたした所存でございます)。

次に思ったのは、

「とか言いつつも、実際自分がサイフ落としたら、無傷でもどってくるハズないワな」。



しかしですね、これがホントに無傷で戻ってきたんですよ!



自分のサイフじゃないんですけどね、学校友達のウクライナ人のセルギーのサイフなんですがね、失くして一週間後に、ホントに無傷で戻ってきたんですよ!


サイフの持ち主セルギーは、前回の記事で登場した、あのセルギーだ。


悩めるウクライナ人セルギー、彼のローマ彫刻顔に影を落としていたのはウクライナ情勢や「女性の日」のプレゼント何にしよう問題だけじゃなかったのだ。
セルギーは、サイフも失くしちゃってたのだ。
全財産とは言わないけれど、大事なモノほとんど全部入りだったサイフを!




10日ほど前のある週末、セルギーはオウル市内のスポーツイベントに家族で出かけた。
イベント会場内は暑かったので、セルギーはジャンパーを脱いで腕に抱えて歩いていたらしい。

そして、気が付いたらサイフがなかったのだと言う。

セルギーは私に言った。



「盗まれたのか、落としたのか、どちらなのかはわからない。でも、サイフはポケットのかなり奥のほうに入れてたから、ポロリと簡単に落ちたりはしなかったと思う。」

「でも、もし盗まれたんだとしても、犯人はフィンランド人ではないと思う。フィンランド人のスリなんて聞いたことないから。あの日は外国人もかなりたくさん来てたから、もし盗まれたんだとしたら、犯人はそういう外国人だと思う。」




… このいちずな信頼っぷり、フィンランド人に聞かせてやりたい。


セルギーのサイフの中には、現金と、銀行のキャッシュカード、クレジットカードなど金銭関係の大事なものはもちろん、フィンランド警察発行の身分証明書(銀行のキャッシュカードみたいなプラスチックのカード)やら、フィンランド滞在許可証(身分証明書と同じくプラスチックのカード)、その上ウクライナの運転免許証まで入っていた。

外国に住んでいる外国人にとって、身分証明書が手元にないというのは、かなり心細い状況だ。(こういう話を聞くたびに、ロンドンで身ぐるみはがされたときのことを思い出す→過去記事「年の瀬にロンドンでボコボコにすられた夜を思い出す」をご参照ください。)

セルギーの場合、家にパスポートを置いてきていたので身分証明書ぜんぶ紛失状態ではなかった
ので、フィンランド発行の他の身分証明書を再発行してもらうにしても比較的スムーズに行くだろう。それでも再発行までの間、毎日パスポートを握りしめて生活しなくていけないことに変わりはなく、心細いことに変わりはない。


セルギーがもっと心配していたのは、ウクライナの運転免許証のことだ。


ご存じのとおり、ただいまウクライナ国内では誰が国の運営をしていくのかすらよくわからない状況だ。運転免許証関係の仕事はウクライナでも警察の管轄らしいのだけれど、セルギーによると、いまウクライナの警察は他のことで忙しそうだから(そりゃそうだろう)、「免許なくしたんで再発行してほしいんですが」というセルギーの問い合わせに彼らがいつ対応してくれるか、想像もつかないという。

盗むんだったらフツーのフィンランド人のサイフにしてくれ。
なんでこのタイミングでウクライナ人のサイフを。。。と思わずにはいられない。




翌朝セルギーが紛失/盗難届をオウル警察署に出しに行ったら、
対応してくれた警察署のオバサンが盗難届のようなな書類をつくってくれたらしいのだが、その紙をもらうとき、そのオバハンに明るく、

「2週間くらい何も連絡なかったら、また来てみて。盗難じゃなくて落としたんだったら、オウルでは70%くらいの割合で戻ってくるから。戻ってくるときはたいてい一週間くらいで戻ってくるから」

と言われたらしい。




(↑オウルの警察署の建物はこんなかんじです)


あんなポケットの奥にあったものを落とすハズがないっていう思いと、フィンランドの身分証明書関係の再発行にかなりお金かかっちゃうショック、ウクライナの免許証再発行すらしてもらえないかもしれないという絶望感、そんなこんなのど真ん中にいたセルギーにこのオバハンの能天気な明るい声はかなりむなしく響いたらしい。


とりあえず「世界16都市でサイフが何個もどってくるか実験したらフィンランドが一番たくさん戻ってきたらしいよ。オバハンのいうこと案外ホントかもよ。」とさっきのニュースの話をひきあいに出して落ち込むセルギーを励ましその場をしのいだが、内心は「ああー、サイフ絶対戻ってこないな、こりゃ」と私は思った。





そういえば、大学院のときに先生が「科学者だろうが政治家だろうが、人の発言はまず疑え。パーセンテージで語る人がいたら、その数字は特に疑え」とか言ってたような気がする。その先生の教えが染みついてるのか、単に数字嫌いなのか、まあどっちでもいいんだけれど、ともかく私はもっともらしく数字で何か言われると、まず疑う。

警察署のオバハンは70%とか言ったかもしれないけど、それもしかしてその70%、去年のオウルのサイフ紛失届10件しかなくて、そのうち7個もどってきたとかいう話じゃないの?とその日も思った。



しかしそのセルギーのサイフ、オバサンの予言通り、一週間後にホントに無傷で戻ってきたのだ。

朝授業中にセルギーに電話がかかってきて、授業中なのに珍しく電話に出るなセルギーと思ったら、警察だったかららしい。「サイフ警察に届いたって!」と声を弾ませながら、お昼休みに警察署に走って行った。



(オウル警察署の中はこんな感じになっております↑)


学校に戻ってきたセルギーに聞いてみたら、中身はほんとに無傷だった。

なくなっているものは何もなかった。
現金も、身分証明書類も。


サイフは警察の紛失物届出ボックス(警察署においてある図書館の図書返却ボックスみたいな箱)に誰かが投函していったらしい。
だから誰が届けてくれたのかはわからない。

落としモノだったのを誰かが拾って大事に保管してくれていて、今週たまたま警察署の近くに行く用事ができたからついでに投函していってくれたのかなとセルギーと話していたけれど、戻ってきたサイフを見せてもらいながら思ったのが、



「もし盗難だったとしても、このサイフの中身見たら犯人も申し訳なさ過ぎて持ち主に返したくなるだろ」。



だって、サイフ開けたら出てくるわ出てくるわ、ほほえましい家族写真の数々!
生まれたてホヤホヤベイビーを抱えた奥さんの出産直後スナップ写真、誕生日ケーキを前に大きな口あけて笑うセルギー母とおぼしきオバサンの写真、息子と自分のツーショット写真、幼稚園で撮影したと思われる息子君のオスマシプロフィール写真の数々。。。

「こんな家族思いの人柄のよさそうな人を悲しませるなんて、なんてことしてしまったのか」と犯人も心を痛めたに違いない。

次に出てくるのはサイフの持ち主がウクライナ人であることを示す証拠の数々。。。。
犯人もテレビでウクライナのニュースを見るたびに、「故郷がこんな大変なことになっちゃって、すでに十分ツライ思いをしている人をさらに悲しませるなんて、なんてことしてしまったのかしら」と心を痛めたに違いない。

で、一週間毎日良心の呵責に悩まされ、結局、「警察には捕まりたくないけれど、サイフは返そう」と決心した…とか????




今回の発見は、「フィンランドでサイフを落としたらホントに帰ってくるかもよ」ということだった。


もちろん、セルギーのサイフが帰ってきたというだけで、私が次に落としたらそれもきっと戻ってくるという保証は何にもないけれど、帰ってくる確率はホントにけっこう高そうだ、と思った。

こんなスバらしい国に住めることに感謝するのと同時に、



●サイフにはなるべく家族写真を入れておこう
    ↓
(そのほうが拾った人が届け出てくれる確率が上がりそうな気がする)



●サイフに現金いくら入ってたか届出書にちゃんと書けるように、普段からいくら入ったかきちっと覚えておこう
    ↓
(サイフが戻ってきたとき、警察の人に「ええ?届出には100ユーロって書いてあるのに、実際には10ユーロしか入ってないワ。見栄っ張ったのかしら?それともコレ違う人のサイフかしら?」とかヘンに混乱発生させないため)


●サイフには必要最低限のものしか入れないようにしよう



●届出書に書くのが恥ずかしようなシロモノ、戻ってきたときに警察署の人に中身確認されるときに見られて恥ずかしいようなシロモノはサイフに入れないようにしよう




と思った次第だ。
フィンランドにお住まいの方、フィンランドに旅行に来る方、ご参考になれば幸いです。

コツは、失くしたときのダメージを最小限にするだけでなく、戻ってきたときのダメージも最小限にすることです。

それでは、また!



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