ターミネーター・ベリマッティ、おくて青年を鍛える

2014年1月13日



私は週に何回か、ダンナとダンナの兄トンパによって半強制的に近所のスポーツジムに連れていかれている。そのジムは家から車で5分くらい、自転車で行くと20分弱のところにある。

スポーツジムというものそのものに疎いので日本と比較しようもないのだけれど、フィンランドにはそっこらじゅうにスポーツジムがある。市町村が運営しているようなものから、超コマーシャライズされた豪華設備つきの巨大な会員制ジム、個人運営のガレージを改装したようなちいさいものまでさまざまだ。

私が行っているジムは、個人がたちあげたもので運営はそのジム利用者の有志が行っている、ほんとに小さいジムだ。大きさも公民館の会議室くらいの大きさだ。

このジムをたちあげた中心人物が、ベリマッティというおじさん。

ベリマッティはウェイトリフティングの元フィンランド代表だった。ジムにそのときの名札が飾ってある。




ちなみにベリマッティはダンナの幼馴染のベリペッカのお父さんでもあるのだけれど、うわさでは60代前半らしい。背は180センチ弱くらい。あたまはきゅっと小さくて、肩幅ひろく水泳選手のような逆三角形体系。全身筋肉なんだけどボディービルダーのようなギトギトしたかんじではなく、ひたすら「ひきしまった60代」としか言いようがない。

両耳にはそれぞれ一個づつ、わっかになったピアス(フープピアスというの?)をしている。両腕にはグルッと唐草模様のような模様のタトゥーをいれていて、Tシャツの袖でかくれてしまって見えない日もあるけど、たいていチラッと見える。背中にもでっかいなにか(でっかいわりに何の絵かわからないのが残念)のタトゥーがついている。早い話、ちょい悪オヤジ(これって死語ですか?)の権化のようなお人なのだ。

ちなみに、ベリマッティの名誉のために補足するけれど、フィンランドの人は(フィンランドだけじゃなくヨーロッパ・北米同じだと思うけれど)日本の人よりタトゥー/刺青に対する抵抗感が少ない。若い人はもちろん、数はすくないけれどワタシらの両親世代の人でもファッション感覚でタトゥーしている人はいる。ベリマッティが特別なわけではない。




ここまで読んでうすうす気が付かれた人もいるかもしれないけれど、私はベリマッティのかくれファンだ。

ジムに行ってベリマッティが来ると、一生懸命ウェイトトレーニングに励んでいるようなふりをしながらもすきあらばベリマッティがよく見える場所・角度にポジショニング、ひそかにベリマッティをおがませてもらっている。

そんな私はベリマッティのことを、「エクスペンダブルズ・ベリマッティ」もしくは「ターミネーター・ベリマッティ」とひそかに呼んでいる。

「エクスペンダブルズ」というのはシルベスタ・スタローンが監督・主演したアクション映画のことだ。この映画は往年のアクションスターがてんこ盛りだったことだけでなく、出てくるアクションスターの平均年齢が50歳を超えてたことでも話題になった。




もし「エクスペンダブル4をつくるんで、フィンランドからひとり推薦してください」とスタローンから電話がかかってきたら、私はまちがいなくベリマッティを推薦する。そういう意味で「エクスペンダブルズ・ベリマッティ」なのだ。

「ターミネーター・ベリマッティ」というのは、単にベリマッティがアーノルドシュワルツェネッガー主演のサイファイ・アクション映画「ターミネーター」に出てきそうだからとか、そういう意味ではない。もっと、ちゃんとした理由がある。



15年くらい前のある秋の日、ベリマッティは息子ベリペッカと一緒にカモ猟に行った。ちなみにフィンランドではハンティングはきのこ狩りか釣りくらいふつうの休日のホビーだ。ついでに補足すると国民一人あたりの猟銃の数は、アメリカよりも多くて世界一らしい。

カモ猟はカモが水辺で休んでいるところをショットガンで狙う。もちろん飛んでいるところを狙ってもいいけれど弾の無駄遣いに終わることが多いので、水に浮かんでいたり葦原で休んでいるところを狙う人のほうが多い。

デコイなんかを岸のちかくにうかべて、自分は葦原のしげみにかくれ、

「アラ、ここはすでに先客がいるから安全っぽいわね、ここちょっと寄って休憩しようかしら」

とかいいながらカモが降り立ってくるのをまち、射程距離内にはいったらドンと撃つ。



ショットガンは散弾といって鉄砲からドンとでたあと弾が小さくバラバラちらばるようにできている。

弾が散らばらないかわりに遠くまで狙えるライフルとちがって、ショットガンは比較的近くのものしか狙えない。でも、近くから狙えればかなりの破壊力だし、弾が散らばるので当たる確率も高い。




その日も、ベリマッティとベリペッカ少年は葦のしげみにひそんでカモを待っていた。



ベリペッカ少年がちょっとトイレかなにかでその場をはなれたとき、うしろでショットガンの発砲音がした。「とーさんカモ撃ったのかな」と思いつつ戻ってみると、なんてこった、ベリマッティが血まみれで倒れているではないか!顔面蒼白になるベリペッカ少年。

なんと、ベリマッティはおなじようにカモ猟に来て近くに潜んでいた別のハンターに、誤射されてしまったのだ。

彼らがいた場所は海岸沿いにある小島で、車のおいてある本土の駐車場までモーターボートで20分くらいかかる。ベリペッカ少年は必死で血まみれの父親ベリマッティを助け起こし、なんとか見よう見まねでモーターボートを運転し、救急車を呼んだ。

そして救急車に乗った後、ベリマッティはこう言った。

「アイル・ビー・バック(I'll be back) 」



この話を聞いて以来、私の中でベリマッティは「ターミネーター・ベリマッティ」になった。

ちなみに私にこの話をしてくれたのはベリペッカ元少年(現在30歳)だ。というわけでどこまでホントでどこから脚色されているのかはわからないけれど、ベリマッティがショットガンで撃たれたのは本当のことです。



こんなかんじでハードボイルドなベリマッティ。ジムに出入りする人からもれなく絶大にリスペクトされている。その中でも特にベリマッティのことを人生の師のようにあがめ、弟子みたいな雰囲気をただよわせている青年がいる。いつもベリマッティがいる日、時間帯をねらってやってきては、いろいろと教えを乞うている。ダンナに聞いたら、彼はウェイトリフティングの大会などにも出たりしていて、ベリマッティにトレーニング方法などを指導してもらっているらしい。



その青年、ふだんはひとりでやって来るのだが、こないだなんと女の子と一緒にやってきた。

彼女なのか彼女未満なのかは不明だけれど、とにかく付き合い始めて日が浅いようだ。ハニカミをかくしつつクールをよそおう青年。自分のいいとこ見せようと、ジムに連れてきたな、こいつ。。

彼女はちょっとぽっちゃり気味でスポーツはあんまり好きそうでなさそうなタイプに見える。スポーツジムも初めての様子だ。青年がかいがいしくギアの使い方や体の動かしかたの説明をしているが、手をさわっちゃったりすると「キャッ」ってかんじである。



青年、彼女に指導しながら、自分も自分のトレーニングメニューをベリマッティ師匠の指導のもとこなす気のようだ。

するとベリマッティ師匠、いつもよりスパルタ!

「もういっちょーーーーーう!こんなもんかお前の実力はー!」とか言いながら、どんどん重そうなウェイトを積んでいる。素人の私が言うのもなんですが、1セットの回数もいつもよりずっと長いような。。。彼女向け「頼れる男」演出バージョンのメニューのようだ。見よ、この弟子と師匠の以心伝心。

彼女のほうがワンセット終わって「次なにしようかしら」みたいな顔してると、ベリマッティ師匠すかさず気が付き青年に「いけ!」と目で合図。青年の教え方がざつっぽいときは彼女のうしろ側にまわって彼女には気づかれないようにしながら、手やら顔などで「しっかりしろ!もっと近くによって!手を取るんだ、手を!!」と身振りでサイレント突っ込みをいれている。

彼女がだいたい終わったころ、ベリマッティ、青年にいちばん重いウェイトのベンチプレスを命じた。

顔を真っ赤にしてがんばる青年。

見守る彼女。



「そうだ、おまえはできる男だ!!」

彼女はそこまで感激した風ではなかったけれど、ベリマッティ、満足そう。

ジムにはそのときほかにも何人かフィンランド男子がいた。全員がこの2人の意図をしっかり把握しつつも、気が付かないふりをしている。
人に気が付かれたくないことが、男にはあるものだ。そういうのはちゃんとリスペクトしてやろう。バレバレでも、気が付かないフリをしてあげる。それがフィンランド男のやさしさなのだ。




この日以降、この青年をジムで見かけることがあっても、あの女の子が一緒のところは見たことがない。2人のその後の関係はどうなったのか、気になるが、聞いてはいけない。それがフィンランド男へのやさしさなのだ。たぶん。。。


というわけで、今日はジムにいくのをさぼってブログを書きました。


それでは、また!


(写真はベリマッティもおすすめのブルーベリー味のリカバリードリンク)



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