語学学校3日目 「今日だけ先生」制度

2014年1月10日



学校生活3日目。なんだこの達成感は。まなぶよろこびに打ち震えるペン、眩しいまっさらなノート、あたらしい友達の電話番号。早く明日にならないかな、早く学校行きたいわとウズウズする私。ピッカピカの小学校1年生でもたちうちできないコーフンっぷりだ。

しかし「コーフンしてます!」とか言ってそれだけをネタにブログ記事を書いて許される年でもないので、とりあえず今日のコーフンを成分分析してみた。



・クラスメイトと仲良くなれてきたヨロコビ&彼らの身の上話が興味深すぎてノックアウト 55%
・フィンランド語/新しいことを学ぶヨロコビ 15%
・学校の教えっぷり&運営っぷりが深すぎ賢すぎなのかそれとも結果論的にうまくいってるだけなのかどっちなのか知りたいの系知的好奇心 30% 

新しいことを学ぶヨロコビについては、言葉のまま。知らなかかったことを知る、分からなかったことがすっきりする、そういうヨロコビ。ここらへん語り始めると長いので省略。クラスメイトの話はすでにネタてんこ盛りに集まっており、書きだすととても長くなるのでこちらも今日はスキップ。次回に。

というわけで、今日は「学校の教えっぷり&運営っぷりが深すぎ賢すぎなのかそれとも結果論的にうまくいってるだけなのか」ものすごく気になる、というお話。



学校の教えっぷりと運営っぷりについての好奇心に火がついたたのは、昨日のことだった。

アイスブレーキング的な自己紹介ゲームのあと休み時間をはさんで、授業の進められ方や、学生割引などのお得情報、校内で守るべきルールなど「学校生活の心得と運営方針」について説明があった。

前回も書いたけれど先生はフィンランド語でしか話さない。配られるプリント類もすべてフィンランド語のみだ。このままだだと私は何か重要なことを聞きもらしてしまうのではないかという不安が教室全体にザザーッとと広がる。その不安拡散と比例して、アラビア語やらペルシャ語やら中国語やらクルド語やらどこの国の言葉かすらわからないナントカ語のペチャクチャおしゃべりが一気にヒートアップ。同じ母国語スピーカーどうしで「ちょっと困ったジャン!どーすんの、うちら!」とか言い合っているようだ(憶測)。先生の声はおしゃべりにかき消される。すると、先生がとつぜん2人とも出て行ってしまった。



先生、きっと怒って出て行ってしまったんだわ、ややや、どうするどうする。。。あのくっちゃべりまくってるクルド語グループに「あんたら先生にあやまりに行きなさいよ!」と言いたいが、わたしクルド語できないし彼ら英語ほとんどできないようだし、超こまったな。。と思っていると、先生が突然もどってきた。見たことのない人も一緒だ。その人を置いて、また先生が出て行ってしまった。しばらくして今度は別の見たことのない人を何人かつれてきた。そしてその繰り返しをなんどか。

よそから6人くらい連れてきたあと、先生が言った。
「フランス語が母国語の人、手をあげて!ハイハイ、じゃあそのみんなこっちに固まって。」「中国語の人!」「タイ語の人!」「ペルシャ語の人!」…(中略)「英語とそれ以外の人、こっちに固まって!」
「(どこかからひっぱってきた人たちを指して)この人たちは今日だけみんなの先生です。みんなの母国語でわからないことを教えてくれます」




そう、先生は怒って出て行ってしまったのではなく、よその教室に上級生を借りに行っていたのだった。私は英語のグループに配属された。私らの「今日だけ先生」はイギリス人のイアン。イアンはサンタバイトがいつでもできそうなエクストラふくよかなビール腹、長いヒゲをたくわえ、背中まであるブルネットの長髪はポニーテールになっている。

「今日だけ先生、自分で立候補したの?」と聞くと、
「んなわけないじゃん、なんか呼ばれるからそのままついてきただらこんなハメになった」とイアン。

「フィンランド語、バリバリ?」と聞くと、
「バリバリじゃない。この学校もまだ4か月目。きみもあと4か月たったら同じ目にあうから心の準備しといた方がいいよ」とイアンにやり。

先生が、昨日のテストの結果などを参考に、いまの35人のクラスを「もうすでにフィンランド語をある程度理解できるグループ」と「ほんとに一言もフィンランド語がわからないグループ」に明日から分けますという説明をしている。教室中にふたたびどよめき。

今度は「守るべきルール」について説明がある。


・遅刻しないこと。毎朝8時に登校すること。
・自主的に勉学に励むこと。休み時間や終了時間は毎日定時ではなく先生がそのつど決める。
・ケータイはマナーモードに。授業中の教室での通話は厳禁。
・トイレやタバコは休み時間に。
・お祈りは休み時間に。授業中のお祈り行為は禁止。


「家が遠くて朝8時に登校できないので朝9時か10時にしてほしいと彼が言ってるんですが(自分とはいわない)」と、うしろの席のアラビア語チームの人。
「ダメです。もしこれが学校じゃなくて職場だったら、どうするんですか?もし私があなたの上司だったら速攻クビです」と、刈り上げヘアのマルヨ先生に一蹴される。

となりでは我らが「今日だけ先生」のイアンがナイジェリア人のセリーヌにつかまっている。ナイジェリアでは部族語のほか英語が公用語らしく彼女も私たち英語グループにいる。しかしアフリカン訛りがすごくてイアンが何度も聞き返している。セリーヌはどうやらいいとこのお嬢様そだちらしく、「ちょっとアンタ、早く訳しなさいよっ。なにボヤボヤしてんの」という感じで、イアンはほぼ「しもべ」扱いだ。しかしどこまでも丁寧真摯なイアン。平手でびしばしされようが、スマホの辞書を駆使しながら必死にセリーヌ嬢の期待に応えている。えらい。見た目は長髪サンタでも、中身はイギリス紳士だ。




ホンモノ先生が英語などで解説したり、卒業まじかのベテラン生徒を「今日だけ先生」を指名するのではなく、あえてまだフィンランド歴の浅い入学4か月程度の生徒にサポートをさせるのはとても賢いな、と思った。

まず第一に、「今日だけ先生」自身にとって、相当フィンランド語の勉強になる。

この時間、イアンだけでなく他の「今日だけ先生」たちも、かなり必死だった。必死に配られたプリントを読み込み、辞書やらを使って調べ、ホンモノ先生が何を言っているか必死に聞き取り、一生懸命説明していた。自分ひとりであれば知らない単語や聞き取れないことがあっても「まあいいか」と思ってそのままにするかもしれない。しかし「いま先生なんて言ったの?どういう意味?この単語なに?」とか言いながらたかってくる人に囲まれていたら、そうもいかないのだ。しかもみんな母国語でせまってくるのだ。ごまかそうとしても、すぐバレちゃうのだ。

第二に、新入生側のメリット。ホンモノ先生が知らないサバイバル情報を、「今日だけ先生」は教えてくれる。

「食堂にある電子レンジはお昼休みになると長蛇の列になるから、あっためなくていいお弁当のほうがいい」とか、「学校の駐車場が混んでてメーターの駐車場にしかとめられなかったら、休み時間にメーター回しに行けば大丈夫」とか、「いつもの教室じゃない場所(専門講習や社会見学など)で授業があることがあって、そういうとき前日に急に言われたりするけど、ちゃんと先生が地図書いたりして教えてくれるから心配ない。」とか、「インターン先を探すのは先生も手伝ってくれるから今から血相かえて探さなくてもなんとかなる」など。ささいなことだけれど、経験者に「実際こういう場合は自分はこうした」という体験談を聞いておくと安心するのだ。「百聞は一見に如かず」ならぬ、「説明100回より体験談1つ」なのだ。しかも、それが自分がちゃんとわかる言葉で語られれば、安心度は倍増する。

第三に、いや、これは人によって違うかもしれない。でも思い切って言ってしまおう。私は思う。「今日だけ先生」をやると、その人は自分(と自分のフィンランド語)に自信がつくような気がする。

帰り際、イアンは私たちにこう言った。
「今日以降も、困ったりわかんないことあったら、廊下で見かけたときでもいいからいつでも聞いてよ!そんなフィンランド語できるわけじゃないけど、いろいろ手伝えることあるかもしれないし」
イヤイヤ連れてこられたとは思えない、この慈愛に満ちた言葉。
イアンありがとう!めっちゃたすかった!われらがヒーロー!ありがと!ありがと!
みんなに囲まれ感謝の言葉にぐるぐるまきにされ、握手求められまくる、イアン。うれしそう。

もし私がイアンだったら、「フィンランドに移住して以来最高の必要とされ具合だったかも!私でも人の役にたてることあるじゃないですか!」とか思いつつ、同時に、「入学当初ってこんなにフィンランド語できないものだったのかしら、自分もこんなだったかしら、自分では気が付きにくいけど私のフィンランド語ってだいぶ進歩したんじゃない?ぐふふふ」とか思いそう。

異国の地でその土地の言葉ができない日々がつづくと、自分ひとりでは何もできない、人にたよりっぱなしの自分がなさけなくなってくるものだ。そんなときに、自分が人の役にたち、しかもそれがその問題の外国語を使って役に立てたのであれば、うれしい以上にいろいろと思う人が多いと思う。



ここまで「今日だけ先生」制度のよさを語ってきたわけだけれど、これらはあくまで私の憶測だ。

もしかしたら学校側としての意図は単に「これだけは絶対きちんと徹底的に理解しておいてもらわないと困るから母国語で解説しよう」ということなのかもしれない。(ちなみに、英語がほとんどできない生徒もけっこういるので、先生が英語で説明という選択肢はあまり現実的ではない。多くの生徒にとって外国語で外国語を説明されているだけで、余計混乱する。)

全員分の母国語通訳のプロをやとったりしなくても、学校そこらじゅうにネイティブスピーカーがいるんだから、通訳をタダでやってもらおう。そのへんでヒマそうにしている人を適宜つかまえればいいのだから、事前の用意もいらず、楽ちんということなのかもしれない。
「今日だけ先生」側の尊厳回復だとか、新入生の心の平安だとか、そういうとこまで見越してのことではないのかもしれない。そういうのは後付けのメリットなのかもしれない。

もしくは、教育大国フィンランドだけに、もんのすごい奥深いとこまで考えに考えて、練りに練られた工夫なのかもしれない。




今日は35人のクラスが「もうすでにフィンランド語をある程度理解できるグループ」と「ほんとに一言もフィンランド語がわからないグループ」の2つのグループに分けられた。私はある程度できる方のグループに入ることになった。

グループ分けの前に先生に、次の段階を勉強中の上級生クラスに飛び級(編入?)するテストを受けてみたらと言われたのだけれど、最初からちゃんと基礎ももういちど勉強しなおしたかったのと、テスト受けて落ちたらそれなりに悲しいなと思ったのと(消極的理由で申し訳ないですが本当のことです)、それと何よりいまのクラスメイトが興味深すぎて、この人たちをもっと観察したかった、もとい、仲良くなりたかったので、飛び級テストは受けなかった。

というわけで、明日からは小グループ、約15人程度のクラスになる。クラスメイトはしゃべり始めるととまらないイラン出身2児の母、レディーファースト行動が目に新鮮なイタリア男(男女平等国家フィンランドにレディーファーストは存在しない)、日本語ペラペラ韓国人新米ママ、友達は大統領な政治亡命中のコートジボアール元政治家、フランス語とカタロニア語と英語とナントカ語を駆使するセネガル生まれのガンビア人、フィンランド彼氏と同棲2年目中国ガール、などなど。

というわけで、明日も勉学と人間観察に励みたいと思います。

それでは、また!


にほんブログ村 海外生活ブログ フィンランド情報へ
ブログランキングに登録しています。楽しんで読んでいただけたら応援クリックしていただけるとうれしいです↑


コメントを投稿

Latest Instagrams

© Kato@Oulu. Design by FCD.